AI監視の入試で不正疑惑、メキシコ最難関大学が5.8万人に再受験命令
メキシコ国立自治大学(UNAM)がAIで監視した入試で満点近い受験者が例年の5倍に急増。不正の疑いを受け、合格者を含む約5.8万人が対面での再試験を強いられる事態になりました。
重要ポイント
- UNAMは2026年、学部入試で初めてリモート受験・AI監視方式を導入した
- 120問中100問以上正解した受験者の割合が16.3%と、過去5年平均の3.5%から約5倍に急増したと報じられている
- 110問以上正解した受験者も0.9%から5.5%へと約6倍に増え、逆に0〜2問しか正解できない受験者も異例に増加した
- 対象となるのは今年または過去5年間に合格ラインを超えた出願者で、合計約5万8,000人(受験者15万8,000人超の36%)が対面での確認試験を受けることになった
- スマートフォンの併用やカメラの死角を突く方法がSNSで拡散していたとの報道がある
このニュースを仕事でどう使うか
- AIプロクタリングや自動採点を伴う試験・研修修了テストを提供・利用する日本企業にとって、今回の件は「AIが監視しているから安心」と単純に捉えることのリスクを示唆している。
- 導入時には、得点分布の異常値を事後的にチェックする体制や、必要に応じて対面・口頭での再確認を行える設計をあらかじめ組み込んでおくことが、信頼性維持の観点で検討に値するといえそうだ。
メキシコ最難関大学として知られる国立自治大学(UNAM)が、初めてAIで監視するオンライン方式で実施した学部入試をめぐり、大規模な不正疑惑が浮上した。結果を分析したところ、高得点者の比率が例年の約5倍に跳ね上がるという異常な偏りが見つかり、UNAMは合格者を含む約5万8,000人に対し、対面での「確認試験」を課すと決定した。当初の入試は2026年5月から6月の週末にかけて実施され、7月に不正の疑いが報告され、新学期が始まる8月10日を前に大学側が対応を迫られる形となった。受験者からはAI監視システム自体への不信の声も上がっている。
背景
メキシコでは人口規模に対して大学の受け入れ枠が限られており、UNAMのような国立最難関大学の入試は極めて競争率が高いことで知られる。今回報じられている枠は約2万2,000人分とされ、15万人以上が受験する狭き門となっている。コロナ禍以降、世界各地でオンライン受験とAIによる不正監視(プロクタリング)の導入が進んだが、大規模かつ選抜性の高い入試にAI監視を全面適用するのは珍しい試みだった。
詳細
UNAMの技術委員会による分析では、2026年の入試で120問中100問以上正解した受験者が16.3%に達し、2021年から2025年までの平均3.5%と比べて約5倍に増加していたことが判明したと報じられている。さらに110問以上正解した受験者も0.9%から5.5%へと大きく増え、満点に近い成績が異常に集中する一方で、0〜2問しか正解できない受験者も例年より目立って増えるという、両極端な結果になったとされる。
大学側の監視には、Territorium Life社と契約したAIシステムが使われ、受験者の挙動を記録・キャプチャして人間の試験監督を補助する仕組みだったと報じられている。しかし不合格となった受験者らからは、このAI監視は「不十分で緩かった」との批判が出ており、スマートフォンを同時に使う、カメラの死角を利用する、身分を偽って代理受験するといった手口がTikTokなどで拡散していたとも伝えられている。
この結果を受けてUNAM技術委員会は、今年または過去5年間に合格点を取得した出願者全員を対象に、対面での確認試験を実施するよう求めた。対象となるのは約5万8,000人で、これは全受験者15万8,000人超の36%にあたる。UNAMの学長は、不正行為が「制度全体に害をもたらし、社会構造そのものを損なう」と述べ、根絶を訴えたと報じられている。新学期が8月10日に始まることから、大学は限られた時間の中での対応を迫られている。
なぜ重要か
日本でも資格試験や就職適性検査、社内研修の修了テストなどでオンライン受験・AI監視の導入が広がりつつある。今回のUNAMの事例は、大規模な選抜試験にAI監視を全面適用した際、生成AIの活用や不正の手口がSNSで急速に共有され、想定より早く形骸化しうることを示している。しかも問題が発覚するのは「事後の統計的な異常値分析」によってであり、リアルタイムでの防止は簡単ではないという点も、試験制度を設計・運用する立場にとって参考になる事例といえるだろう。
今後の見通し
UNAMは新学期開始前という限られた時間の中で、約5万8,000人分の対面試験を実施する必要があり、運営上の負荷や対象者からの反発が続く可能性がある。不正の具体的な手口や責任の所在についても、今後さらに詳細が報じられる見通しだ。
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