欧州最大級の旅行検索プラットフォーム「Omio」が、OpenAIの技術を自社サービスと社内の開発体制の両方に組み込んで事業を再構築している事例を、OpenAIが公式ブログで紹介しました。Omioは鉄道・バス・フェリー・航空券を横断検索できるサービスで、47カ国・3,000社以上の交通事業者と連携しているとされています。今回の事例では、ChatGPTを使った会話型の旅行検索と、コーディング支援ツール「Codex」を使った開発体制の刷新という二つの側面が紹介されています。
ポイント
- Omioは2023年、ChatGPT上で旅行検索を行える取り組みをいち早く始めたと報じられています
- 「ローマからフィレンツェへの最速ルートは?」といった自然文の質問に、実際に予約可能な交通機関の候補を返す仕組みを構築したとされています
- ChatGPTの週間利用者数は9億人規模とされ、Omioの交通ネットワークがその利用者に接続される形になっています
- 社内では全エンジニアがCodexを使い、設計・開発・テスト・コードレビュー・保守までの工程に組み込んでいるといいます
- OpenAIの事例紹介によれば、これにより開発工数が従来の20%程度まで減り、四半期がかりだった複数人プロジェクトが1人・1カ月規模に短縮された例もあるとしています
背景と詳細
Omioはドイツ・ベルリンを拠点とする旅行検索サービスで、鉄道・バス・フェリー・航空券を横断的に比較・予約できる点を特徴としています。OpenAIの事例紹介によると、Omioは47カ国・3,000社以上の交通事業者のデータと連携しており、こうしたリアルタイムの在庫・料金情報にOpenAIのモデルを接続することで、会話形式での旅行提案を実現したとされています。単に対話文を生成するだけでなく、モデルの出力を実際の予約可能な便・座席・料金データに結び付けている点が特徴として紹介されています。
同社はまずChatGPTを従業員向けに展開し、社内での活用を広げるところから始めたと報じられています。その後、コーディング支援ツールのCodexを導入し、リサーチや設計段階から実装、テスト、コードレビュー、運用保守に至るまで、開発ライフサイクル全体に組み込む方向へと拡大したといいます。OpenAIはこれを「検索型のインターフェースからAIネイティブな顧客体験への転換」の一例として位置づけています。段階的にChatGPTからCodexへと活用範囲を広げていった経緯は、他社が社内でのAI導入を検討する際の一つの進め方として参考になりそうです。
一方でOmioは、最終的な判断や成果物への責任は人間が担うという方針を明確にしているとされます。同社CTOのTomas Vocetka氏の発言としてOpenAIが紹介するところによると、「責任と説明責任は人間にある。AIは開発・分析・意思決定を速くしてくれるが、主導権を握るのは人間だ」としています。
なぜ重要か
日本でも旅行予約サービスや比較サイトを運営する企業は多く、会話型AIをどう検索・予約導線に組み込むかは共通の課題です。Omioの事例は、AIをチャット窓口として付け足すだけでなく、リアルタイムの在庫データと接続してこそ実用的な会話型検索になるという点を示しています。また、開発工数の削減という数字は、自社のエンジニアリング体制にAIコーディング支援をどこまで組み込むかを検討する際の参考材料になります。人間が最終責任を持つという同社の姿勢も、AI活用を進める上でのガバナンス設計の一例として参考になりそうです。従業員向け展開から段階的に開発現場へ広げていくという進め方自体も、社内AI導入の順序を考える上で示唆に富みます。
今後の見通し
OpenAIの事例紹介は自社サービスの効果を強調する内容であるため、数値の裏付けや第三者による検証は今のところ確認できていません。会話型AIによる旅行検索がどこまで一般利用者に定着するか、また開発工数削減が他社でも再現できるかは、今後の実装事例の広がりを見ながら判断する必要がありそうです。