画像生成AI企業Midjourneyが、自社を著作権侵害で提訴しているディズニー、ユニバーサル、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの3社に対し、各社が社内でどのようにAIを活用しているかの詳細を開示するよう裁判所に求めていると、TechCrunchが2026年7月4日に報じました。Midjourneyの弁護団は今週、担当判事に対し、スタジオ側のAI利用に関する情報開示の範囲を広げるよう申し立てを行ったとされています。狙いは「フェアユース」と「アンクリーンハンズ(unclean hands、自らも同種の行為をしているという抗弁)」という2つの主張を補強することにあるとみられます。
ポイント
- ディズニーとユニバーサルは2025年6月、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは2025年9月に、それぞれMidjourneyを著作権侵害で提訴したと報じられています
- スタジオ側は、Midjourneyがバート・シンプソン、ダース・ベイダー、シュレック、バットマン、スーパーマンなど著作権キャラクターの画像を無許可でAI学習に使い、利用者にも無断生成させていると主張しています
- 2026年6月、担当の連邦治安判事(マジストレイト・ジャッジ)は、スタジオ側が開示すべきAI利用情報を「消費者向けのAIアプリケーション」に限定する決定を出したとされています
- Midjourneyはこの制限の撤回を求め、ジョン・クロンスタット判事に申し立てを行ったと報じられています
- 求めているのは、スタジオが社内のストーリーボード作成や企画立案(アイディエーション)でAIをどう使っているかを示す社内文書や会議記録などとされています
背景と詳細
この訴訟は、生成AIと著作権をめぐる米国内の主要な法廷闘争のひとつです。ディズニーとユニバーサルが2025年6月にMidjourneyを提訴し、続いて2025年9月にワーナー・ブラザース・ディスカバリーも訴訟に加わりました。スタジオ側の主張は、Midjourneyが有料会員に対して自社の著作権キャラクターの画像を際限なく生成させるサービスを提供している上、AIモデルの学習自体にもこれらのキャラクター画像を無断で使用した、というものです。
これに対しMidjourneyは、著作権キャラクターの画像でAIを訓練する行為は「フェアユース」の範囲内だと主張して争っています。さらに今回新たに前面に出てきたのが「アンクリーンハンズ」という抗弁戦略です。これは、訴えている側(スタジオ)自身が同種の行為、つまり無断で著作物を使ったAI活用を社内で行っているのであれば、その事実は原告の主張の正当性そのものを揺るがすという考え方です。Midjourney側の弁護団は、スタジオが映画やドラマの制作・マーケティングの過程で社内的にAIツールをどう使っているかを示す証拠を得たいとしています。
証拠開示(ディスカバリー)をめぐっては、2026年6月に担当の連邦治安判事が、スタジオ側が開示すべき情報を「消費者向けのAIアプリケーション」に関するものに限定する決定を下したと報じられています。Midjourneyはこの限定的な決定を不服として、今週、担当判事に対し開示範囲を広げるよう求める申し立てを行ったとされています。
なぜ重要か
日本国内でも、AI企業とコンテンツ権利者との間で著作権をめぐる緊張が高まっており、今回の訴訟は今後の議論の参考事例になり得ます。特に注目すべきは、被告側のAI企業が「原告となった大企業自身のAI利用実態」を証拠開示の対象にしようとしている点です。これは、コンテンツ企業側がAIを禁止・非難する一方で、社内では同様の技術を活用しているケースがあるという業界の実情を法廷の場で浮き彫りにしようとする試みといえます。日本のコンテンツ企業やクリエイター、AI事業者にとっても、権利侵害を主張する際に自社のAI活用実態がどこまで問われ得るかを考えるうえで示唆のある動きです。
今後の見通し
Midjourneyの申し立てに対し、ジョン・クロンスタット判事がどのような判断を下すかは今のところ明らかになっていません。開示範囲が広がればスタジオ各社の内部でのAI活用実態が明らかになる可能性がありますが、判事が現状の限定的な開示方針を維持する可能性も残されています。今後の審理の推移が注目されます。