OpenAIが米トランプ政権に対し、自社株式の5%相当を政府に譲渡する案を提示していることが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道で明らかになりました。3月の資金調達時点でOpenAIの企業価値は8520億ドルとされており、その5%は約426億ドル相当にのぼります。サム・アルトマンCEOはトランプ大統領や政権幹部と協議を重ねているとされ、AIがもたらす経済的利益を国民に分配する枠組みとして提案しているとみられます。ただしこの比率は、バーニー・サンダース上院議員が主要AI企業に求めていた出資比率を大きく下回るものです。

ポイント

  • OpenAIが米政府に自社株式5%相当を提供する案を提示、とFTが報道
  • 3月の資金調達時点の企業価値8520億ドルに基づくと、5%は約426億ドル相当
  • アルトマン氏はトランプ大統領、ラトニック商務長官、ベッセント財務長官に構想を伝え、サンダース上院議員とも近く話し合ったとされる
  • サンダース氏は6月、OpenAIなど主要AI企業に株式の50%を公的に保有させる法案を提起しており、5%案はその水準を大きく下回る
  • 構想はアラスカ永久基金型の仕組みを軸に、Google・Meta・Anthropicなど他の主要AI企業にも同様の出資を求めるものだが、他社が応じる意向を示したという情報はない
  • FTによれば議論はまだ構想段階で、実現には米議会による法制化が必要になる可能性がある

背景と詳細

トランプ政権はこれまでにもIntelやIBMなど複数の民間企業に政府出資を行っており、AI企業についても同様の枠組みを模索する動きが指摘されていました。一方、民主党側では今年6月、サンダース上院議員が「米国AI主権基金法(American AI Sovereign Wealth Fund Act)」を提唱し、OpenAIやAnthropicのような主要AI企業に株式の50%以上を公的機関に保有させるよう求めていました。AI企業の急成長がもたらす富の偏在や社会的リスクへの批判が、こうした法案の背景にあるとみられます。

こうした中、アルトマン氏はトランプ大統領や政権幹部との協議で、自社を含む主要AI企業がそれぞれ株式の5%を、アラスカ州が原油収入を運用し州民に配当する「アラスカ永久基金」に似た仕組みの基金に拠出する案を持ちかけたと報じられています。アルトマン氏はこの枠組みについて、AIがもたらす経済的恩恵を一般市民にも分配する最善の方法だと主張しているとされます。

FTの報道では、この議論はまだ概念段階(コンセプチュアル)で早期の段階にあり、実際の制度化には米議会による法制化が必要になる可能性があるとされています。また、Google・Meta・Anthropicなど他の主要AI企業も同様に出資することが構想に含まれていますが、これらの企業が応じる意向を示したという情報は今のところありません。

なぜ重要か

AI企業の株式を政府が保有する枠組みが実現すれば、AI開発の恩恵をどう社会に還元し、どう規制するかという国際的な議論に影響を与える可能性があります。日本でも生成AIの普及に伴う富の集中や規制のあり方は今後の政策論点になり得るため、米国での議論の行方は一つの参考材料になります。またOpenAIの企業価値8520億ドルという数字自体、AI業界の資金規模の大きさを改めて示すものであり、AI関連ビジネスに関わる日本の企業や投資家にとっても業界動向を把握する手がかりとなります。

今後の見通し

現時点ではOpenAIと米政権の協議は構想段階にとどまっており、正式な合意や法案提出には至っていません。サンダース氏が求める50%という水準との隔たりは大きく、今後の交渉で出資比率や対象企業の範囲がどう調整されるかが焦点になりそうです。Google、Meta、Anthropicなど他のAI大手がこの枠組みに参加するかどうかも、実現可能性を左右する要素とみられます。