写真編集AI企業のPhotoroomが、自社開発のテキスト画像生成モデル「PRX」について、学習データの作り方を解説する技術ブログ記事をHugging Face上で公開しました。連載の第4弾となる今回のテーマは「データ戦略」です。モデルの構造や学習方法を扱った過去3回に続き、良い画像生成モデルを支える土台としてのデータセット構築プロセスを詳しく紹介しています。同社はPRXのコードをGitHubで公開しており、内容を誰でも確認できる点も特徴です。

ポイント

  • Photoroomは2026年7月6日、テキスト画像生成モデル「PRX」のデータ戦略を解説するブログ記事を公開
  • 事前学習段階では個々の画像の完璧さより「カバレッジと多様性」を優先する方針を採用
  • 画像に短いキャプションではなく100〜200語程度の長く詳細なキャプションを付けたところ、画像品質の評価指標(FID・CMMD・DINO-MMD)がいずれも向上したと報告
  • キャプション生成には視覚言語モデル「Qwen3-VL-8B」を採用し、テキスト中心の画像(スクリーンショットや文書など)を分類して除外
  • 重複画像の検出やJPEG圧縮の最適化など、データ処理のコストを抑える工夫も公開

背景と詳細

Photoroomはスマートフォン向け写真編集アプリを手掛けるAI企業で、自社で画像生成モデルPRXを開発しています。今回の記事は、モデルアーキテクチャ(Part1)、学習設計(Part2)、24時間での高速学習(Part3)に続く連載第4弾で、学習データをどう集め、整え、選別したかに焦点を当てています。

記事によると、Photoroomは公開されているデータセットと自社データを組み合わせ、既存の品質フィルタリングを活用する実用的なアプローチを取っています。大量の画像データを扱うため、列指向形式の「Lance」で対話的に探索し、並列処理フレームワーク「Ray Data」で数百万行単位に断片化。最終的には分散学習向けの「Mosaic Data Shards」形式に変換して学習に投入しているとのことです。

キャプション付けでは、複数の候補モデルを比較検証した上でQwen3-VL-8Bを採用し、1枚あたり100〜200語の密度の高い説明文を生成しています。あわせてQwen3-8Bを使ってキャプション内容を「ビジュアル」「テキスト」「NSFW」の3種類に分類し、スクリーンショットや文書画像など画像生成の学習に不向きなデータを除外する仕組みも導入しました。画像のハッシュ値を使った重複検出や、JPEG形式で画質を保ったまま容量を圧縮する工夫など、コストと品質を両立させる取り組みも紹介されています。

さらに記事では、学習時のバッチ処理を効率化するため、画像を512px・1024px・2048px・4096pxの4段階の解像度に分け、それぞれ複数のアスペクト比の枠に振り分ける「バケッティング」という手法も採用したと説明しています。極端に小さい画像は破棄し、大きく引き伸ばしすぎないよう拡大率にも上限を設けるなど、学習データの質を保つための細かな調整を積み重ねている様子がうかがえます。

なぜ重要か

画像生成AIの性能はモデルの構造だけでなく、学習データの質と量に大きく左右されることを、開発の現場からあらためて具体的に示した事例です。日本国内でもAI画像生成の開発・活用が広がっていますが、モデルの精度向上ばかりに注目が集まりがちな中、データ収集・前処理の設計そのものが差別化要因になり得ることを、実務レベルで開示した点は参考になります。キャプションの詳しさが品質に直結するという知見は、自社で画像生成AIの活用を検討する国内企業にとっても実装上のヒントになりそうです。

今後の見通し

Photoroomは今後、ファインチューニングや人間の好みに合わせた調整(嗜好整列)についても続報を出す予定だとしています。連載が続くことで開発の全体像がより明らかになる可能性がありますが、今回の内容がどの程度他社のモデル開発に応用できるかは、今後の実践例を待つ必要がありそうです。