Hugging Faceは、オープンソースのロボット学習フレームワーク「LeRobot」の新バージョン「v0.6.0」を公開したと自社ブログで発表しました。今回のアップデートは「Imagine, Evaluate, Improve(想像し、評価し、改善する)」を掲げ、ロボットが行動前に結果を予測し、その成否を評価し、失敗を人間の介入で補正するという学習サイクル全体を一つのフレームワークでカバーすることを目指しています。世界モデルによる予測、報酬モデルによる自動評価、複数のVLA(視覚言語行動)モデルやベンチマークの追加など、多岐にわたる機能拡張が盛り込まれました。ロボット向けAI開発の裾野を広げる動きとして注目されます。

ポイント

  • 「想像(Imagine)→評価(Evaluate)→改善(Improve)」という学習ループを掲げ、世界モデル・報酬モデル・補正データ収集の機能をまとめて追加
  • 将来予測を行う世界モデル方策として「VLA-JEPA」「LingBot-VA」「FastWAM」を追加
  • NVIDIAの「GR00T N1.7」やHugging Face発の「EO-1」「EVO1」など、複数の視覚言語行動(VLA)モデルに対応
  • 行動の成否を自動判定する報酬モデル「Robometer-4B」やゼロショット評価が可能な「TOPReward」を追加
  • LIBERO-plusやRoboTwin 2.0など6種類のベンチマークに対応し、lerobot-evalなど新しいコマンドラインツールも用意

背景と詳細

LeRobotは、Hugging Faceが手がけるロボット学習向けのオープンソースフレームワークです。人間の操作データ(デモンストレーション)からロボットの行動方策を学習させ、実機やシミュレーターで評価・展開するまでの一連の作業を統合的に扱えることを特徴としています。

今回のv0.6.0では、行動を生成するだけでなく行動する前に結果を想像する世界モデルの方策が新たに加わりました。ブログによれば、「VLA-JEPA」は潜在空間上で将来を予測し推論時には計算コストがかからない設計、「LingBot-VA」は自己回帰的な映像・行動生成で実際の観測をフィードバックする方式、「FastWAM」は50億パラメータの動画生成モデルと小型の行動モデルを組み合わせた構成だと説明されています。あわせて、NVIDIAの最新モデル「GR00T N1.7」(Cosmos-Reason2-2Bを搭載)、約12GB(bf16)のメモリで推論できる「MolmoAct2」、Qwen2.5-VL-3Bを基盤とする「EO-1」、拡散トランスフォーマー方式の「Multitask DiT」(約4.5億パラメータ)、InternVL3-1Bを基盤とした軽量モデル「EVO1」(7.7億パラメータ)など、規模も設計思想も異なる複数のVLAモデルが利用可能になったと報じられています。

さらに、行動の成否を自動で判定する報酬モデルも新たに追加されています。「Robometer-4B」は100万件以上のロボット軌跡データで訓練された汎用モデルとされ、「TOPReward」は視覚言語モデル(VLM)の出力確率をそのまま活用することで追加学習なしのゼロショット評価を可能にしたと紹介されています。評価環境としてはLIBERO-plus、RoboTwin 2.0、RoboCasa365、RoboCerebra、RoboMME、VLABenchの6種類のベンチマークに対応しました。加えてlerobot-rollout(人間介入によるDAgger方式の補正データ収集)、lerobot-eval(統一的なベンチマーク評価)、lerobot-annotate(VLMによる自動言語アノテーション)といったコマンドラインツールも新設されています。

このほか、RealSenseカメラの12ビット深度映像への対応、ハードウェアエンコーダーを使った動画処理の高速化(マルチカメラ環境で最大2倍)、pip install lerobot時の基本依存関係を約40%削減する軽量化など、開発者の使い勝手に関わる改善も行われました。対応ハードウェアとしてSO-100/101、Koch、OpenArm、reBot、UnitreeのG1などが挙げられており、GPUはT4から8基のH200まで、Hugging Face Jobs経由での利用も想定されているとのことです。

なぜ重要か

オープンソースのロボット学習フレームワークが、行動生成だけでなく予測・評価・補正データ収集までを一体で扱えるようになった点は、ロボットAI開発の実務フローに直結する変化です。企業や研究機関が独自にロボットを動かす際、評価やデータ収集にかかる作業を省力化できる可能性があります。また、NVIDIA製モデルを含む複数のVLAモデルが一つの枠組みで扱えるようになったことで、日本の製造業やロボティクス関連企業が技術選定を行う際の比較検討がしやすくなるとみられます。生成AIの応用先としてロボティクスへの関心が高まる中、こうしたオープンソースの基盤整備は国内の研究・開発コミュニティにも波及する可能性があります。

今後の見通し

Hugging Faceのブログでは、今後もacademic・industry・hobbyistの各コミュニティによるモデルやベンチマークの追加、プラグインエコシステムの拡大が想定されているとしています。世界モデルや報酬モデルを組み合わせた学習ループが実際のロボット運用でどこまで有効性を発揮するかは、今後の実装事例の蓄積を待つ必要がありそうです。