韓国の半導体大手SKハイニックスやサムスン電子の社員が、いま結婚仲介市場で「最も欲しい相手」になっていると米誌MITテクノロジーレビューが報じました。AI向け半導体の特需で従業員に巨額のボーナスが支給されるようになったことがきっかけです。ソウルの結婚仲介会社Sunooのマッチメイカーは「半導体社員を紹介してほしいという依頼が急増している」と証言しています。婚活市場の「格付け」でも、半導体エンジニアは医師や弁護士に迫る評価を得始めているといいます。

ポイント

  • SKハイニックスは労働組合との協定で営業利益の10%を社員に還元しており、今回のボーナスは1人当たり平均47万6000ドル(約7000万円)規模になったと報じられています
  • サムスン電子も5月に労組との合意で同様の大型ボーナスを支給しました
  • ソウルの結婚仲介会社Sunooでは、半導体社員35歳マネージャーのBaekさんへの見合い依頼が1年で目立って増えたといいます
  • 婚活業界では半導体社員が、従来は医師・弁護士・富裕層出身者に限られていた最上位の「格付け」に近づきつつあると報じられています
  • 平均的な韓国人の約20倍の年収を得る「シリコンカラー」と呼ばれる新しい富裕層の出現が背景にあります

背景と詳細

Baekさんは1年前、母親の勧めでSunooに登録しました。韓国では住宅価格や教育費の高騰から結婚を「手の届かない夢」と感じる若者が多く、仲介会社は学歴・職業・年収・家庭環境などをもとに独身者を格付けしています。これまでこの上位層は医師や弁護士、資産家の子女などに限られてきましたが、AI半導体ブームによる巨額ボーナスが、この序列に変化を起こしていると仲介業者は話しています。若者の間では冗談交じりに「お見合いに一番いい服装はSKハイニックスの制服」とも言われているそうです。

背景にあるのは、AI向け半導体需要を追い風にしたサムスン電子とSKハイニックスの記録的な業績です。半導体は韓国の輸出の4割以上を占めるとされ、両社の株価上昇を背景に韓国の代表的な株価指数KOSPIも大きく上昇しました。一方で恩恵は一部の大手半導体企業の社員に集中しており、韓国銀行はこうした状況を、一部だけが急成長し大多数が取り残される「K字型」の格差拡大だと警告しています。若年層(15〜29歳)の失業率は依然として高い水準にあると伝えられており、限られた大企業への富の集中が際立つ形になっています。

こうした格差への懸念は政治の場にも波及しました。今年5月には大統領府政策室長のキム・ヨンボム氏が、AI関連企業の超過利益を国民に還元する「国民配当」構想を提起し、SNSでの発信をきっかけにKOSPIが一時大きく下落する場面もありました。半導体以外の業界で働く人たちの間では、自分たちの年収規模では届かないボーナス額への不満もオンラインで聞かれるといいます。

なぜ重要か

日本でもラピダスやTSMC熊本工場の稼働など、半導体産業への投資と雇用拡大が進んでいます。韓国のケースは、特定の先端産業に富が集中したときに、社会の中でどのような分断や不公平感が生まれうるかを示す先行事例といえます。少子化や婚姻率の低下という共通の課題を抱える日本にとって、収入格差が結婚や家族形成の選択にどう影響するかを考える材料にもなります。AI関連企業の利益をどう社会に還元するかという韓国での議論は、日本でも半導体・AI産業への公的支援や補助金が拡大する中で、参考になりうるテーマです。

今後の見通し

半導体産業は好不況の波が大きい業種であり、現在の待遇や社会的評価が長く続く保証はありません。サムスン電子は生産工程の自動化を進める計画も報じられており、将来的な雇用への影響が注目されます。韓国国内では所得格差やAI利益の再分配をめぐる議論が今後も続くとみられます。