AI半導体の記憶チップ需要が空前の活況となる中、韓国の大手半導体メーカーで働く従業員が「結婚相手として最も人気の高い職業」に躍り出ていると米MIT Technology Reviewが伝えています。巨額の業績連動賞与を背景に、婚活市場での評価スコアが上昇し、医師や弁護士に迫る人気ぶりだといいます。同紙は同日、ドナーから摘出した眼球を蘇生させ、将来の眼球移植を可能にしうる新型装置についても報じました。AIブームが生む経済的な恩恵と、医療技術の進歩という2つの動きを紹介します。

ポイント

  • SK hynixは営業利益の10%を無上限で従業員に還元する制度を導入しており、米メディアの報道では2026年の一人当たり賞与が最大で約7億ウォン(推定47万6000ドル)に達する可能性があると伝えられています
  • ソウルの結婚相談所「Sunoo」によると、SK hynix従業員の相性評価スコアは99点満点中78点から82点に、サムスン従業員は80点から84点に上昇したと報じられています
  • 同相談所の担当者は「半導体で働く人を紹介してほしいという相談が非常に多い」と述べたとされています
  • 韓国銀行(中央銀行)は所得格差が拡大する「K字型」経済への懸念を表明しており、大統領府では「AI配当」課税構想を巡る議論も起きていると伝えられています
  • スペイン・バルセロナのゲノム制御センターの研究チームが、摘出後の眼球に酸素や栄養を含む液を灌流させて機能を維持する装置「ECaBox」を開発し、摘出から24時間後も光への反応が確認できたと報告しています

背景と詳細

SK hynixとサムスンは、AI向け高性能メモリチップの需要拡大を受けて記録的な業績を上げており、両社とも2026年5月に時価総額1兆ドルを突破したと報じられています。SK hynixは業績連動賞与制度を見直し、営業利益の10%を上限なく従業員に分配する仕組みを導入しました。米メディアの報道によれば、これにより従業員の平均年収は韓国の平均的な会社員のおよそ20倍に達するともされています。サムスンも同時期に同水準の一時金を支給したと伝えられています。

この潤沢な賞与が、韓国の婚活・結婚相談市場に波及しています。35歳のSK hynixのマネージャー、ペクさんは1年前に母親の勧めで結婚相談所に登録したところ、同僚とともに以前より良い相手を紹介されるようになったといいます。相談所大手Sunooの担当者は、半導体従業員の紹介依頼が急増していると述べ、格付けスコアも上昇したと説明しています。一方でペクさんは「最近は骨を埋めるつもりで頑張ろうと話している」と話したと伝えられ、賞与が勤続日数に比例するため、育児休業取得などを避ける空気が広がっているとの指摘もあります。韓国銀行はこうした一部業界への富の集中が社会全体の所得格差(いわゆるK字型経済)を助長しかねないと警告しており、政府内では「AI配当」を財源とする再分配策の是非を巡る論争も起きているとされています。

もう一つの話題である眼球移植の研究では、スペイン・ゲノム制御センターのピア・コスマ氏らのチームが、摘出直後から劣化が始まる眼球を維持するための灌流装置「ECaBox」を開発しました。ブタの眼球を用いた実験では、室温や4度での保存では24時間以内に組織が損なわれた一方、ECaBoxで処置した眼球は摘出から24時間後も「著しく生存性が高い」状態を保ち、灌流開始から約15分で光への反応も確認できたと報告されています。人の眼球6人分・計12個を用いた実験でも、処置した眼球の方が良好な状態を保ったといいます。2023年に米ニューヨーク大学ランゴン医療センターで行われた眼球移植手術は外科的には成功したものの、視力の回復には至らなかったとされ、研究チームは今回の技術がその課題の解決につながる可能性があるとみています。

なぜ重要か

日本でも半導体産業への政策的な期待は高く、熊本県などでの工場誘致に伴う地域経済への波及効果が注目されています。韓国の事例は、AI需要の恩恵が特定の業界・企業に極端に集中した場合に何が起きうるかを示す先行事例といえます。賃金や社会保障の議論において、業界間・企業間の格差拡大が個人の生活設計や労働観にまで影響しうる点は、日本の政策立案や企業の賞与制度を考える上でも参考になりそうです。眼球移植の研究については、高齢化が進む日本でも視覚障害や失明の治療選択肢を広げる可能性がある基礎研究として注目に値します。

今後の見通し

半導体賞与が婚活市場に与える影響は、AIチップ需要の変動次第で今後縮小する可能性もあり、持続的な現象かどうかは見通せません。眼球移植の装置についても、研究チームは携帯型の手術室対応版の開発とヒト眼球でのさらなる検証を計画しているとされ、臨床応用にはなお時間を要するとみられます。