米MIT Technology Reviewが2026年7月2日に公開したインタビュー記事「Teaching AI to run with the turbines」で、オーストラリアのエネルギー大手Woodside Energyのデジタル部門担当副社長アンドリュー・メロウニー氏が、同社におけるAI活用の現状を語りました。同社は液化天然ガス(LNG)などの生産施設を運営しており、AIはチャットボットや画像生成のような消費者向けサービスとは異なり、安全性が最優先される産業インフラの運用そのものに組み込まれ始めているといいます。なお本記事はMIT Technology Reviewのカスタムコンテンツ部門「Insights」が、Woodsideのマネージドサービス提供元であるInfosysと共同で制作したインタビュー企画である点も付け加えておきます。
ポイント
- Woodside EnergyのデジタルVPアンドリュー・メロウニー氏がAI活用の実態を語った
- 同社は2015年ごろから予測分析・最適化モデルなど従来型AIの導入を開始
- 現在、本番環境で50体のAIエージェントが稼働しているという
- LNGプラントの起動を支援する「Startup Advisor」、設備保全を最適化する「Maintenance Intelligence」を具体例として紹介
- Maintenance Intelligenceは、対象設備において5年間で保全にかかる時間を最大15%削減できる可能性があるとしている
背景と詳細
Woodside EnergyはLNGをはじめとする資源開発を手がける、西オーストラリア州を拠点とするグローバルエネルギー企業です。メロウニー氏によれば、同社のAI活用は生成AIブーム以前の2015年ごろから始まっており、探査・掘削・保全・プラント運転といった領域で予測分析や最適化、機械学習モデルを積み重ねてきた歴史があるといいます。生成AIや対話型AIが話題になる以前から、産業現場ではデータに基づく意思決定支援の仕組みづくりが進んでいたことがうかがえます。
現在同社が力を入れているのが、エージェント型AIの実装です。記事で紹介されている「Startup Advisor」は、LNGプラントの起動という複雑な工程においてオペレーターの意思決定を支援するAIコパイロットです。もう一つの「Maintenance Intelligence」は予知保全のためのプラットフォームで、対象とした一部の設備では5年間で保全作業時間を最大15%削減できる可能性が示されたとしています。メロウニー氏はこうした取り組みについて、AIを既存の業務プロセスに単純に追加するのではなく、仕事の進め方そのものを見直す機会と位置づけていると述べています。
同社はマネージドサービスプロバイダーであるInfosysと連携しながらAI基盤の整備を進めており、今回の記事もその協業関係のもとで制作されたインタビュー企画です。スポンサー色のある企画記事である点は、内容を読む上で留意しておく必要があります。
なぜ重要か
生成AIをめぐる報道は消費者向けチャットボットや画像生成サービスに焦点が当たりがちですが、実際には発電・資源・製造といった重厚長大産業でのAI活用が、経済や社会インフラへの影響という点でより大きな意味を持つ可能性があります。日本でもエネルギー・プラント・インフラ関連企業が保全業務の効率化や現場オペレーションの高度化にAIを活用する動きが広がっており、Woodsideの事例は同種の取り組みを検討する企業にとって参考材料になり得ます。特に、生成AI以前から地道にデータ基盤とMLモデルを積み上げてきた点や、エージェント型AIの導入をガバナンス・信頼できるデータの整備とセットで進めている姿勢は、安全性が問われる現場でAIを使う際の一つの指針として注目に値します。
今後の見通し
Woodsideは今後、個別業務ごとの点的なAI導入から、複数のAIエージェントが連携し合う統合的な仕組みへと移行していく方針を示していると報じられています。メロウニー氏は「自律的な企業」を長期的な目標として挙げていますが、具体的な達成時期や範囲については記事内で明言されていません。産業インフラにおけるエージェント型AIの拡大が、安全性やコスト構造にどのような影響を及ぼすかは、今後の展開を注視する必要がありそうです。