米国のテクノロジー系メディアMIT Technology Reviewが配信するニュースレター「The Download」7月3日号は、英国で新たに施行された「世代的タバコ禁止」を巡るコラムと、SF作家Elizabeth Bearの新作短編の紹介を中心に構成されています。同ニュースレターは平日毎日、テクノロジー分野の話題を短くまとめて届けるダイジェスト形式で、この号ではタバコ規制という一見テック分野から離れたテーマも取り上げられました。筆者のJessica Hamzelou氏は、2人の娘を育てる親としての視点から、この政策の実効性への疑問と、それでも支持する理由を綴っています。あわせて号内では、AI企業のアクセス制限や自動運転を巡る訴追など、複数の短信も紹介されています。

ポイント

  • 英国では2026年4月29日に「タバコ・電子タバコ法(Tobacco and Vapes Act 2026)」が成立し、2009年1月1日以降に生まれた人には生涯タバコを販売できなくなると報じられています
  • 小売店は2027年1月1日までに表示義務などの新ルールへの対応を完了する必要があるとされています
  • この方式は喫煙率をゼロに近づけることを目指す「タバコ・エンドゲーム」と呼ばれる政策アプローチです
  • 世代を区切った販売禁止を導入した国は、モルディブに次いで英国が世界で2例目とされています
  • ニュースレター筆者は、政策が意図通り機能するか不確実だとしつつも、子育ての視点から支持を表明しています

背景と詳細

今回取り上げられた英国の規制は、年齢で一律に喫煙を禁じるのではなく、生まれた年を基準に対象者を区切る「世代的禁止」という手法を採用している点が特徴です。具体的には、2009年1月1日以降に生まれた人は、18歳になっても38歳になっても、生涯タバコやかぎたばこ、巻紙などを購入できないとされています。年齢がどれだけ上がっても対象者は変わらないため、時間の経過とともに購入可能な世代が自然に減っていく仕組みです。販売禁止に加えて、電子タバコやニコチン製品の広告・スポンサー活動の禁止、子どもに訴求しやすいパッケージやディスプレイの規制、違法な流通を取り締まるための小売免許制度の導入なども盛り込まれていると報じられています。

The Download筆者のJessica Hamzelou氏は、7歳と5歳の娘を育てる親という立場からこの政策を論じています。同氏は、自身の子ども時代にはタバコが文化の中心にあったのに対し、今の子どもたちはタバコそのものに嫌悪感を示す世代だと指摘し、こうした世代間の意識の変化を政策の追い風として挙げています。一方で「この方式が本当に機能するかどうかは誰にも分からない」としながらも、魅力的な試みだとして支持する姿勢を示しています。

同号ではこのほか、SF作家Elizabeth Bearの新作短編「You Do Your Own Time」も紹介されています。銃を構えた「司書」たちが図書館を舞台に、政府に禁じられた伝記やケーススタディをソリッドステートドライブ(SSD)に保存し、それを宇宙へ送り届けようとする物語で、国家による物語統制への抵抗と、記録を残すことの意味がテーマとして描かれていると紹介されています。

なぜ重要か

日本でも受動喫煙対策や加熱式たばこの規制は議論が続いていますが、購入者の年齢ではなく生まれ年で区切る英国方式は、法制度としてかなり異例のアプローチです。効果が実証されていない段階から政策として実行に移した点は、規制のあり方を考えるうえで参考になる事例といえます。またモルディブに続き2例目という位置づけは、今後他国が同様の枠組みを検討する際の先行事例としても注目されそうです。

今後の見通し

英国では2027年1月1日までに小売店側の対応が求められており、実際の施行状況や効果は今後数年かけて明らかになっていくとみられます。世代的禁止という手法が他国に広がるかどうかも、英国での運用実績次第で左右される可能性があります。