英国では2026年、生まれた年によって生涯タバコを買えなくする「たばこ・電子タバコ法」が成立しました。2009年1月1日以降に生まれた人は、将来何歳になっても合法的にタバコを購入できません。2027年1月1日から、購入可能な年齢の下限を毎年1歳ずつ引き上げていくことで、この禁止を段階的に定着させる仕組みです。実効性を疑う声や反発も根強い中、米国のIT・科学専門誌MIT Technology Reviewの記者ジェシカ・ハムゼルー氏は、2人の娘を育てる中で見えてきた世代間の意識の変化を挙げ、「機能しないかもしれないが、それでも支持する」との立場を記しています。

ポイント

  • 英国の「たばこ・電子タバコ法」は2026年に成立し、2009年1月1日以降に生まれた人への生涯タバコ販売禁止を定めた
  • 2027年1月1日から購入可能年齢の下限を毎年1歳引き上げる方式で施行される
  • 同法には電子タバコ・ニコチン製品の広告やスポンサーシップの禁止、パッケージ・陳列規制も含まれる
  • モルディブは2025年11月に世界初の世代的禁煙政策を導入した一方、ニュージーランドは2022年成立の同種の法律を2024年2月の政権交代後に廃止した
  • 英国では改革党(Reform UK)などが禁止の長期的な実効性や個人の自由の観点から反対しており、闇市場拡大を懸念する声もある

背景と詳細

「世代的禁煙(generational tobacco ban)」とは、課税強化や警告表示の拡大といった従来の喫煙抑制策とは異なり、特定の生年以降の人には生涯タバコを販売しないことで喫煙そのものをなくそうとする政策です。英国はこの考え方を国として法制化した数少ない例の一つで、対象世代が18歳になっても38歳になっても、タバコの販売は違法のままとなります。

同様の政策はすでに前例があります。ニュージーランドは2022年に世代的禁煙法を可決しましたが、2024年2月に発足した新政権がこれを撤回しました。一方でモルディブは2025年11月、世界で初めてこの種の禁止を実際に導入したと報じられています。英国国内でも、ナイジェル・ファラージ氏率いる改革党が「この禁止は長く続かない」と主張し、廃止を公約に掲げるなど、政治的な綱引きが続いています。

支持する立場からは、公衆衛生上の効果を指摘する声が上がっています。バース大学の研究者は、この政策を「依存からの自由」を若い世代に保証するものと位置づけています。米国の禁煙推進団体アクション・オン・スモーキング・アンド・ヘルスのクリス・ボスティック氏は、11年前に米国内で同様の政策を提案した際、禁煙を推進する主流団体からも反対を受けた経緯があると振り返っており、この種の政策がいかに合意形成の難しいテーマであるかを物語っています。世界保健機関(WHO)によれば、喫煙は世界で年間700万人以上の死者に関わっており、そのうち160万人ほどは受動喫煙が原因とされています。

なぜ重要か

日本ではまだ「特定の生年以降は生涯タバコを買えなくする」という制度は議論の俎上に載っていませんが、若い世代の喫煙離れが進んでいる点は英国と共通しています。海外で実際に施行・撤回の両方の事例が出てきたことで、規制強化と個人の自由のバランスをどう取るかという論点が、日本の受動喫煙対策や未成年者保護の議論にも参考材料を提供する可能性があります。また、政権交代によって撤回されたニュージーランドの例は、長期的な保健政策を制度としてどう安定させるかという課題を示しており、他分野の政策設計にも通じる示唆があります。

今後の見通し

英国の制度は2027年1月からの施行開始を控えており、実際の運用開始後に密輸や闇市場の拡大といった懸念が現実になるかどうかが焦点になるとみられます。政治情勢の変化によってニュージーランドのように撤回される可能性も指摘されており、今後の政権の動向次第で制度の行方が左右される可能性があります。