米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2026年6月25日、マイクロソフトとOpenAIを相手取った著作権侵害訴訟の訴状を修正し、争点をマイクロソフトに絞り込みました。新たな訴状では、マイクロソフトがOpenAIのAIモデル学習のために特別に設計したスーパーコンピューティングシステムを構築し、それがNYT記事を含む著作権コンテンツの大規模な無断利用を可能にしたと主張しています。この訴訟修正の背景には、2026年3月に米連邦最高裁がSony対Cox Communications訴訟で下した判決があり、間接的な著作権侵害の立証基準が大きく引き上げられたことがあると、Ars Technicaなど複数メディアが報じています。今回の動きは、生成AI企業とその基盤を提供するクラウド事業者の責任範囲を問う訴訟として、日本の企業にも関わる可能性がある注目の展開です。
ポイント
- NYTは2026年6月25日、マイクロソフトとOpenAIへの著作権訴訟の訴状修正を裁判所に申し立てたと報じられています
- 新たな訴状では、マイクロソフトが「285,000以上のCPUコアと10,000個のGPU」を備えたカスタムスーパーコンピュータを、著作権コンテンツを使ったAI学習のために特別に構築したと主張していると伝えられています
- 背景には2026年3月25日、米連邦最高裁がSony対Cox Communications訴訟で下した判決があり、間接的侵害の立証には「故意の誘発」の証明が必要になったとされています
- NYTはこの新基準に対応するため、OpenAIへの一部請求を取り下げ、マイクロソフトの「積極的な誘発行為」に主張の重点を移したと報じられています
- マイクロソフトは今回の訴状修正を「不利な判例から訴えを守るための最後の試み」と反論していると伝えられています
背景と詳細
NYTがマイクロソフトとOpenAIを著作権侵害で提訴したのは2023年12月27日で、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に訴状が提出されました。当初の訴えは、ChatGPTなどのAIモデルがNYTの記事を無断で学習データに使用し、ときには記事をほぼそのまま出力してしまう「ハルシネーション(誤った引用)」の問題も含めて著作権を侵害している、というものでした。
今回の訴状修正で焦点となっているのは、マイクロソフトの役割です。NYT側は、マイクロソフトが提供したインフラは汎用的なクラウドサービスではなく、著作権コンテンツを用いたAI学習を目的として特別に設計されたシステムだったと主張していると報じられています。具体的には「285,000以上のCPUコアと10,000個のGPU」を備えたスーパーコンピュータで、NYTの記事を含むインターネット上のコンテンツを大規模に学習させるために構築されたとされています。
この訴訟戦略の転換には、2026年3月25日に米連邦最高裁がSony対Cox Communications訴訟で下した判決が影響していると報じられています。この判決では、インターネットサービスプロバイダーが利用者の著作権侵害行為を「知っていた」というだけでは間接的な責任を問えず、侵害行為を「積極的に誘発する意図」があったことの立証が必要になるという、より厳しい基準が示されたとのことです。NYTはこの新基準に自らの主張を適合させるため、OpenAIに対する一部の間接侵害請求を取り下げ、代わりにマイクロソフトが意図的にインフラを設計・提供したという点に主張を集中させたとみられます。
これに対しマイクロソフトの広報担当者は、今回の訴状修正について「不利な判例から訴えを守るための最後の試みだ」とArs Technicaに反論したと報じられています。OpenAI側も従来から、AIモデルの学習は「争う余地のないフェアユース(公正利用)」であり、ChatGPTは「NYTの購読の代替にはならない」と主張してきています。
なぜ重要か
この訴訟は、生成AIの学習データ利用を巡る著作権問題の中でも、AIモデル開発企業だけでなくクラウドインフラを提供する事業者の責任がどこまで問われるのかを占う重要な事例です。日本国内でもクラウド事業者とAI開発企業が協業してデータセンターやGPUインフラを構築する動きが広がっており、同様の法的リスクが将来的に議論される可能性があります。また、記事を無断学習された媒体社にとっては、賠償や利用停止を求める際の法的な道筋を示す先例にもなり得ます。日本のメディア企業やAI活用企業も、この訴訟の行方を注視しておく価値があるといえるでしょう。
今後の見通し
今回の訴状修正が裁判所に認められるかどうかがまず注目されます。認められた場合、マイクロソフトの「意図」を巡る主張・反証が争点となり、審理はさらに長期化する可能性があります。最終的な判断が下されるまでには相応の時間がかかるとみられ、今後の続報が待たれます。