イーロン・マスク氏が率いるX(旧Twitter)が、米連邦取引委員会(FTC)に対し、2022年に課された監視命令の解除を求める請願を提出しました。これに対し、電子フロンティア財団(EFF)や電子プライバシー情報センター(EPIC)など15の団体が7月2日、「解除は認めるべきではない」とする意見書をFTCに提出したとArs Technicaが報じています。背景にはXが進めるAI開発とユーザーデータ活用への懸念があります。

ポイント

  • Xは2026年5月、FTCに2022年の同意命令の廃止を求める請願を提出
  • 同意命令はTwitter時代の2022年、電話番号やメールアドレスを広告目的に転用した違反で科され、当時は約1億5000万ドルの制裁金と定期報告義務が課されていた
  • EFF・EPIC・全米消費者連盟・パブリック・シチズンなど15団体が7月2日、解除への反対意見をFTCに共同提出
  • 反対派は「Grok AIの学習データにユーザー同意なしのデータが使われた」「2025年に大規模なデータ侵害があった」などを根拠に挙げていると報じられている
  • 一方でアイオワ州主導の12州連合は、同意命令が「言論の自由に関わる活動を狙い撃ちする形で乱用されてきた」として解除を支持しているとされる

背景と詳細

発端は2022年にさかのぼります。当時のTwitterは、二段階認証(アカウント保護)のためにユーザーから預かっていた電話番号やメールアドレスを、本人の同意なく広告のターゲティングに流用していたことが発覚しました。FTCはこれを問題視し、同社に制裁金の支払いと、一定期間にわたり第三者機関によるプライバシー監査を受け入れることを義務付ける同意命令を課しました。

マスク氏の買収後、X社は2026年5月にFTCへ請願書を提出し、「新しい経営体制のもとでプライバシー・セキュリティ体制は根本的に改善された」うえ、AI分野における米国の競争力を維持するためにも監視の重荷を外すべきだと主張していると報じられています。

これに対しEFFなどの団体は、社名や体制が変わったからといって過去の義務が消えるわけではないと反論。さらに、Xが展開する生成AI「Grok」の学習にユーザーの同意なくデータが用いられた疑いや、2025年に発生したとされる大規模データ侵害を指摘し、AIの活用はむしろデータ悪用のリスクを高めると主張しています。団体側は、Xの企業価値が数百億ドル規模とされる中で、コンプライアンス対応コストは「誤差程度」に過ぎないとも訴えているとのことです。

意見書の提出期限だった7月2日には賛否双方の立場が出そろい、アイオワ州を筆頭とする12州の連合はむしろ同意命令の撤廃を支持する側に回ったと報じられています。

なぜ重要か

日本の読者の多くもXを日常的に利用しており、投稿履歴や連絡先情報がAIの学習データとしてどう扱われるかは他人事ではありません。今回の攻防は、SNS大手がAI開発を理由に規制監視を緩めようとする際に、当局がどこまで厳格な姿勢を保てるかを占う試金石とも言えます。仮にFTCがXの請願を認めれば、「違反を認めた後に改善を主張するだけで監視を解除できる」という前例になりかねず、他のプラットフォームの姿勢にも波及する可能性があります。海外の規制動向は、国内でのSNS利用や情報発信の際のリスク判断材料としても参考になります。

今後の見通し

FTCは今後、双方から提出された意見書を踏まえて同意命令の解除可否を判断するとみられますが、明確な期限は報じられていません。米国内でも州レベルで賛否が分かれていることから、最終判断までには一定の時間を要する可能性があります。