米国の公立図書館・学校・大学向けに電子書籍貸出サービスを提供する「Libby」が、AI生成コンテンツを読者が選んで表示・非表示にできる新機能の準備を進めていると報じられています。先週OverDriveの新CEOに就任したマーク・デベヴォワーズ氏が、米メディアThe Vergeのニュースレター「Lowpass」の取材に明らかにしたものです。対象はAIが執筆した書籍本文だけでなく、AIによる音声朗読や機械翻訳、AI生成のカバーアートにも及ぶとされています。生成AIによる粗悪な電子書籍の急増が図書館の蔵書管理を脅かすと指摘される中、業界最大級のプラットフォームによる対応として注目されています。

ポイント

  • Libbyは9万2000以上の図書館・学校・大学向けに提供され、600万点以上のタイトル、10億回以上の貸出実績を持つ電子書籍貸出アプリです
  • 新CEOのマーク・デベヴォワーズ氏は「AIは私たちにとって新たなフロンティアだ」と述べ、AI対応を経営課題に位置付けました
  • 新機能は、AI著作、AIナレーション音声、機械翻訳、AI生成アートを含むコンテンツについて、利用者が設定で表示・非表示を選べるようにするものです
  • デベヴォワーズ氏によれば、蔵書の大部分は2020〜2022年以前に出版された作品で「定義上AIではない」とのことです
  • 具体的な導入時期は明らかにされておらず、フィルターの実効性は出版社や自費出版者による正確な情報開示(ラベリング)に依存するとされています

背景と詳細

OverDriveは設立から40年、フロッピーディスクやCD-ROMでの電子書籍配信から出発した企業です。Libbyは2017年に消費者向けアプリとして立ち上げられ、以来公共図書館システムの標準的な電子書籍貸出インフラとして定着してきました。現在では9万2000以上の図書館・学校・大学に提供され、600万点超のタイトル、10億回超の貸出という規模に成長しています。

こうした中、Amazon Kindleダイレクト・パブリッシングなどの自費出版プラットフォームでは、アルゴリズムで大量生成された低品質な電子書籍、いわゆる「AIスロップ」が、一般的な恋愛小説から技術解説書まで幅広いジャンルで急増していると報じられています。図書館は司書によるキュレーション(選書)を強みとしてきましたが、こうした粗製濫造コンテンツの流入は蔵書管理の負担を増し、選書の信頼性を脅かしかねない課題として認識されています。

こうした状況を受け、就任したばかりのデベヴォワーズ氏は、AI生成コンテンツを一律に禁止することも、逆に読者に押し付けることもしない「実務的な中間案」として、表示・非表示を選べるフィルター機能を打ち出す方針だと報じられています。対象範囲を書籍本文のAI執筆だけでなく、AIナレーションによるオーディオブックや機械翻訳、AI生成のカバーアートにまで広げている点が特徴です。ただし、この仕組みの有効性は最終的に、出版社や自費出版の著者がAI利用の有無を正直に申告するかどうかにかかっているとも指摘されています。

なぜ重要か

日本の公共図書館では電子書籍貸出サービスの普及自体が米国ほど進んでいませんが、生成AIによる低品質コンテンツの急増という課題は国境を問わず共通しています。米国最大級の電子図書館インフラが、AI生成コンテンツを「禁止」も「野放し」もしない選別的な対応を選んだことは、表示・非表示を利用者に委ねるという設計思想の一例として、国内の電子書籍配信サービスや出版プラットフォームが今後の方針を検討するうえで参考になり得ます。またこの動きは、AI生成コンテンツの開示・表示という論点について、法規制を待たずプラットフォーム側が自主的に対応を始めていることを示す事例でもあります。

今後の見通し

Libbyの新機能について具体的な導入時期は示されておらず、実効性は出版社や自費出版者がAI利用の有無を正確に開示するかどうかに左右されるとみられます。フィルターの精度や運用ルールの詳細は、今後の正式発表を待つ必要がありそうです。