米大手法律事務所ワクテル・リプトン・ローゼン・アンド・カッツの訴訟担当パートナー、ビル・サビット(William Savitt)氏が、イーロン・マスク氏がらみの二つの大型訴訟で連続して勝利を収めたとして、米メディア「ジ・バージ」が特集記事を組みました。2022年にはツイッター(現X)側の代理人として、マスク氏に440億ドルの買収契約履行を認めさせ、2026年にはオープンAI側の主任弁護人として、マスク氏がサム・アルトマン氏らを訴えた「マスク対アルトマン」裁判をオープンAI勝訴に導いたと報じられています。同記事は、サビット氏の経歴や法廷でのマスク氏との緊迫したやり取りを紹介しています。
ポイント
- ワクテル・リプトンのビル・サビット氏が、2022年のツイッター買収契約訴訟と2026年のオープンAI訴訟で、いずれもマスク氏側に勝利したと報じられている
- 2022年はツイッター(現X)側代理人として、買収を撤回しようとしたマスク氏に契約履行を認めさせた
- 2026年の「マスク対アルトマン」裁判ではオープンAI・サム・アルトマン氏側の主任弁護人を務めた
- 法廷での尋問中、マスク氏はサビット氏の質問について「ひっかけるための質問だ」「あなたの質問はほとんど不公正だ」と述べたと伝えられている
- 陪審は2026年5月18日、マスク氏の請求は出訴期限(時効)を過ぎているとして、オープンAI側の勝訴を認めたと報じられている
背景と詳細
2022年、マスク氏は一度合意した440億ドルでのツイッター買収から撤回しようとし、ツイッター側はデラウェア州衡平法裁判所に提訴しました。サビット氏はツイッター側の代理人として、マスク氏の主張に法的根拠がないことを訴えました。裁判は同年10月に開廷予定でしたが、直前になってマスク氏は当初の条件通り買収を完了することに合意し、同月末に買収が成立したと報じられています。
2026年には、マスク氏がオープンAIの共同創業者サム・アルトマン氏らを相手取り、「非営利団体として設立されたオープンAIを営利化し、自らを欺いた」として1500億ドル規模の損害賠償を求める訴訟(マスク対アルトマン裁判)を起こしていました。この裁判でサビット氏はオープンAI側の主任弁護人としてマスク氏本人への反対尋問を担当。マスク氏は2026年4月28日から30日にかけて証言台に立ち、サビット氏の質問に対して「ひっかけるように仕組まれている」と反発する場面もあったと報じられています。
陪審は2026年5月18日、審理からわずか2時間足らずで評決に達し、マスク氏の請求は出訴期限を過ぎているとして、アルトマン氏・共同創業者グレッグ・ブロックマン氏・オープンAI・マイクロソフトのいずれについても責任を認めなかったと報じられています。ジ・バージの記事は、こうした法廷でのやり取りを経て、これまで表舞台に出ることの少なかったサビット氏が広く知られる存在になったと伝えています。
なぜ重要か
オープンAIを巡る訴訟は、生成AI業界の主導権や非営利・営利の枠組みのあり方を占う重要な裁判として注目されてきました。今回の評決により、オープンAIの企業再編を巡る法的な不確実性の一つが取り除かれた形です。日本国内でもオープンAIの技術やサービスを活用する企業・開発者は多く、訴訟リスクの動向は間接的にサービスの継続性にも関わるため、今回の経緯を押さえておく意味があります。また、著名な経営者同士の紛争で弁護士の交渉・尋問戦略がどのように機能したかは、企業法務や訴訟対応を考える上でも参考になります。
今後の見通し
マスク氏側が今回の評決を不服として上訴する可能性は残されていますが、現時点でその方針は明らかになっていません。オープンAIの非営利・営利を巡る位置づけについては他の論点や規制当局の動きも続くとみられ、今後も関連する報道が続く可能性があります。