主要なAIチャットボットに「1から10の間でランダムな数字をひとつ挙げて」と尋ねると、ほぼ必ず「7」という答えが返ってきます。ChatGPTやClaude、Geminiといった大規模言語モデル(LLM)は、統計的に最も「それらしい」答えを選ぶよう学習されているため、開放的な質問に対しても似たような無難な答えに収束しがちです。米MIT Technology Reviewの報道によると、オーストラリアのスタートアップSpringboardsは、この「AIの集団思考(groupthink)」問題を解決するため、独自のLLM「Flint」を開発しました。同社はオープンソースモデルQwen 3を土台に、あえて多様な答えを引き出す学習手法を組み込んでいるといいます。

ポイント

  • ChatGPTやClaudeに「1〜10のランダムな数字」を聞くと、ほぼ常に「7」が返るなど、主要LLMの回答は驚くほど画一的だと報じられています
  • 豪スタートアップSpringboardsは、この「groupthink(集団思考)」問題に対応する独自LLM「Flint」を開発しました
  • Flintはアリババ傘下のオープンソースモデル「Qwen 3」をベースに、回答の中でばらつきを出せる箇所を特定し、あえてランダム性の高い語句を挿入するよう学習させたと報じられています
  • 同じ質問で比較すると、ランダムな数字の生成でChatGPT・Claudeが「7」と答えたのに対しFlintは「3.7916」、車の名前ではトヨタ・ホンダに対しFord F-150、広告コピーでも異なる案を出したと伝えられています
  • 現在は広告・マーケティング業界向けのブレインストーミング用途に絞って提供されているようです

背景と詳細

LLMの回答が画一化する背景には、モデルの学習方法そのものがあります。LLMは大量のテキストから「次に来る可能性が最も高い単語」を予測するよう訓練されているため、突飛な答えより無難で頻出する答えを選びやすい構造になっていると記事は説明しています。この傾向は、コーディングや事実確認のような「正解がひとつ」のタスクには好都合ですが、旅行プランの提案やアイデア出しのような開放的な問いには不向きです。

この問題を裏付ける学術的な根拠として、記事は2025年のNeurIPSで最優秀論文賞を受賞した「Artificial Hivemind」という論文を紹介しています。この研究では25種類の異なるLLMにそれぞれ50回ずつ同じプロンプトを与えたところ、「時間」に関する比喩表現1,250件の回答の大半が「Time is a river(時間は川である)」または「Time is a weaver(時間は織り手である)」という、ごく少数の表現に収束したとされています。

Springboardsは共同創業者のPip Bingemann氏(CEO)とKieran Browne氏(CTO)が率いるチームで、Flintをオープンソースの中国製モデルQwen 3の上に構築したと報じられています。同社はブレインストーミングツールとして、ChatGPTやClaudeなど複数モデルの回答をワークスペースにドラッグして組み合わせられる製品を展開しており、Flintは「あえて突飛な方向に振る」選択肢として使われているようです。実際に試した広告戦略家のZoe Scaman氏は「まったく違う方向に自分を投げ出してくれる」と評価する一方、まだプロトタイプ段階で限界もあると付け加えています。別のマーケティング担当者Maximilian Weigl氏は、平均への回帰があるツールからは本当に革新的なものは生まれないと慎重な見方を示したと伝えられています。

なぜ重要か

日本でも広告制作やコンテンツ企画、商品ネーミングなどでChatGPTやClaudeを使う場面が増えていますが、同じような発想しか出てこないと感じた人も少なくないはずです。今回の報道は、その体感が個人の使い方の問題ではなく、LLMの学習方法そのものに起因する可能性を示している点で注目に値します。ブレインストーミングや企画立案でAIを活用する際、複数のモデルや手法を組み合わせて「多様性」を意識的に補う工夫が、今後より重要になりそうです。

今後の見通し

FlintはまだAlpha版の段階で、対象も広告・マーケティング領域に限られていると報じられており、一般消費者向けチャットボットとして普及するかは不透明です。ただ、LLMの「金太郎飴」化という課題そのものは、創造性が求められる用途でAI活用を進めるうえで無視できないテーマとなりそうです。今後、他の主要プレイヤーが同様の多様性向上策を取り入れるかどうかにも注目が集まります。