OpenAIのサム・アルトマンCEOが、同社の株式5%相当を米国の主権富裕基金(ソブリン・ウェルス・ファンド)に寄付する案を提案していたと、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じました。TechCrunchが2026年7月2日に伝えたところによると、この提案は現在も協議段階にあり、他のAI企業にも同様の拠出を求める構想だとされています。背景には、トランプ政権との関係構築やAIブームに対する国民の反発への対処という狙いがあるとみられます。実現には議会承認が必要とみられ、まだ確定した合意ではありません。

ポイント

  • OpenAIのサム・アルトマンCEOが、株式5%を米国の主権富裕基金に寄付する案を提案したとFTが報道
  • 現在の企業価値852億ドルとされる評価をもとにすると、5%相当は約426億ドル規模に上るとの試算も報じられています
  • 他のAI企業にも同様の株式拠出を求める構想だが、詳細は未定
  • 狙いは政権との良好な関係構築と、AIブームへの国民の反発(政治的逆風)への対処とされる
  • 1976年設立の「アラスカ恒久基金」のように、基金からの配当を国民に直接分配する仕組みを想定しているとされる

背景と詳細

OpenAIは2026年4月に「Intelligence Age向けの産業政策」と題する政策提言を公表しており、その中でAI関連企業に直接出資する公的な富裕基金を設立し、そのリターンを国民に直接還元する構想を示していました。資産や資本へのアクセスの有無にかかわらず、より多くの人がAIの成長がもたらす恩恵を享受できるようにするという狙いです。

トランプ大統領も2026年6月、国民が企業とのパートナーシップの一部になるという考え方について言及し、この構想を後押しする発言をしていたと報じられています。

一方、AI企業への課税を巡っては、バーニー・サンダース上院議員が2026年6月、AI企業の株式50%に一度限りの課税を課す「American AI Sovereign Wealth Fund法案」を提出しています。ただしこの法案は委員会審議の段階にとどまっており、成立の見通しは立っていません。

今回のアルトマン氏の提案は、こうした政治的な動きと並行して浮上したものです。FTによれば、基金の設計はアラスカ州が1976年に石油収入を原資として設立した「アラスカ恒久基金」を参考にしており、基金の運用益を州民に配当として分配する仕組みを模していると報じられています。

なぜ重要か

生成AIの急成長により、一部のAI企業と経営者に莫大な富が集中しているとの批判が米国内で強まっています。今回の提案が実現すれば、AI企業の成長の果実を株式の形で国民に還元する初の大規模な枠組みとなる可能性があります。日本でもAI企業の急成長や富の集中を巡る議論は今後活発化すると見られ、米国発のこうした制度設計は、規制のあり方や社会還元策を考える上での参考事例になり得ます。また、OpenAIのような巨大AI企業と政権との距離感がどう変化するかは、AI業界全体の規制環境にも影響を与える可能性があります。

今後の見通し

FTの報道によれば、この提案はまだ予備的な協議段階にあり、正式な合意には至っていません。実行には議会の承認が必要とみられており、手続きが複雑化する可能性があります。他のAI企業が同様の拠出に応じるかどうかも含め、今後の政権・議会側の反応が注目されます。