米国のサブサンドイッチチェーン「Jersey Mike’s」が新規株式公開(IPO)に向けて米証券取引委員会(SEC)に提出した書類に、「人工知能(AI)」という単語が22回も登場していることを、米メディアTechCrunchが報じました。サンドイッチ販売が本業でAIとの関連が薄いはずの同社が、投資家向けのリスク説明にまでAIの文言を盛り込んでいる点を、記者は皮肉を込めて紹介しています。この事例は、投資家のAIへの期待の高さが業種を問わず企業の情報開示にまで影響を及ぼしている現状を象徴していると報じられています。

ポイント

  • Jersey Mike’s(米サブサンドイッチチェーン)がニューヨーク証券取引所への上場に向けIPO申請書類(S-1)を提出したと報じられています
  • 提出書類内で「artificial intelligence」「AI」という語が22回登場した一方、「weather(天候)」への言及はわずか5回だったとTechCrunchが指摘しています
  • AIに関する記載は「当社は事業においてAI技術の活用を始めている」といった抽象的な表現にとどまり、具体的にどのようなリスクがあるのかの説明はないと報じられています
  • 記事によると「software(ソフトウェア)」は52回、「data(データ)」は112回言及されており、AIという単語だけが突出して多いわけではないものの、業態を考えると異例の頻度だと指摘されています
  • 記者は、AIとほぼ無縁な業態の企業までもが投資家向けにAI言及を強いられている状況を、現在のAIハイプ(過熱報道)の行き過ぎの表れとして批判的に論じています

背景と詳細

米国のIPO申請書類(S-1)には、投資家に対して事業に潜むリスク要因を開示する項目があります。近年は多くの企業がここに「AI技術の活用」を挙げるようになっており、TechCrunchの記者は「サンドイッチ店ならさすがにAIに触れる必要はないだろう」という軽い興味からJersey Mike’sの申請書類を確認したところ、実際には「当社は事業においてAI技術の活用を始めている」という趣旨の一文がリスク要因として盛り込まれていたと伝えています。

記事では、この記載が具体的にどのようなAI活用を指すのか、またそれがなぜ投資家にとってのリスクになり得るのかについての説明が書類内にないことも指摘されています。天候不順による店舗休業や食材コストの変動といった、飲食チェーンにとって現実的なリスク要因である「weather(天候)」への言及がわずか5回にとどまる一方で、AIという言葉が22回登場している対比が、記者の批判の核心になっています。

記事はまた、実際にAIを導入した企業の例としてスターバックスの在庫管理AIツールを挙げています。このツールは「数を正しく数えることができず」、最近になって廃止されたと報じられており、AI活用を掲げること自体が必ずしも成果に結びつくとは限らない現実を示す事例として紹介されています。TechCrunchはこうした事例を踏まえ、投資家の間で高まる「AI企業」への期待感が、実際にはAIとほとんど関係のない事業内容の企業にまで、書類上の言葉選びとして波及していると論じています。

なぜ重要か

日本でもIPOやM&Aの目論見書、事業計画書に「AI活用」を掲げる企業が増えていますが、今回のケースは、そうした記載が実態を伴っているかどうかを見極める重要性を改めて示しています。投資判断や取引先評価の際に、AIという言葉の登場回数や勢いだけで事業の先進性を判断するのではなく、具体的に何をどう活用しているかを確認する視点が欠かせません。中小企業やスタートアップが資金調達や採用の場面で「AI」を強調する際にも、同様の誇大表現に陥っていないか自省する材料になり得ます。

今後の見通し

今回の記事は一企業の事例を取り上げたものですが、AIという言葉が投資家向け書類における一種の「必須ワード」になりつつある傾向は、他の業種のIPO案件でも今後注目される可能性があります。実態の伴わないAI言及がどこまで許容されるかは、今後の開示制度や投資家側の見る目次第だと考えられます。